インプラントの予定が保険の入れ歯で満足された症例

投稿日:2016年10月28日

カテゴリ:インプラントの症例

初診時

インプラント「入れ歯を作ったのですが、痛くて、がたついて合いません。インプラントにしたいのですが・・・・」と言うことで来院された60代の男性です。

奥歯が左右2本ずつ、計4本ありません。
「入れ歯がガタつくということは、入れ歯に不当な力がかかっていると思われます。

そもそも、自前の歯がなくなるくらい強い力が、奥歯にかかっていたと思われます。

インプラント自前の歯がダメになるような強い力がかかっているところに、異物であるインプラントを植立させたら、インプラントもあごの骨もダメになる可能性が出てきます。

家を建てる時には設計図面や構造計算をいたします。
それと同じように歯の設計図面や構造計算を事前にさせていただけますか。」
と説明し、分析をすることとしました。

インプラント

分析時

インプラント歯の模型を作り、かみ合わせを分析する咬合器に装着しました。

入れ歯やインプラントの入る、十分に大きなスペースがあります。
にもかかわらず、入れ歯が痛くて、ガタつくのは何故でしょうか。
さらに分析します。

赤い線が理想的な歯の長さです。
赤い線よりも長い歯に咬みこむ下の歯は無くなっていきます。
あまりにも杵(きね)の打ちつける力が強くて、臼が壊されたと言うような状況を想像なさってください。

インプラント金属の台と平行になるほど、かむ力がバランスよく全体に分散させることができます。
また、左右にあごをギチギチすり合わせた時も、入れ歯はがたつきません。

道路と自動車を想像してください。
どんな高級車でも舗装されていない道路を走ればガタガタします。
舗装された道路ならば中古の軽自動車でもスイスイ走れます。
入れ歯も同じです。どんなすばらしい入れ歯でも、かみ合っている歯がデコボコしていたらガタついてしまうのです。

インプラント「自前の歯ですら、あごの力で壊されてしまいます。入れ歯はがたついてしまいます。インプラントは骨ごと壊されてしまいます。
『入れ歯ががたつくからインプラント』と言うのではなく、まず、インプラントに咬みこむ上の歯に舗装工事をかけましょう。」
と説明いたしました。

赤線が理想的な歯の長さです
とび出ている上の奥歯と当たる下の奥歯は、
他の歯よりも早く無くなっていきます

分析時

インプラント分析結果を説明し、困っている下あごではなく、上あごの歯の治療に同意を得ました。
材料や審美を問わず、平面をそろえるだけならば、保険でできます。

次にインプラントの費用の説明をしました。
無い歯の本数は左右2本ずつ、計4本です。
インプラントは1本30万円ですので、4本で120万円です。
咬む力に対抗するために、経済的に可能ならば左右3本ずつ、計6本、180万が理想的です。
と説明しました。

患者さんは悩まれました。
当然です。
まだ2回しか会っていない人間に200万近い金額の話をされれば、悩まないわけはありません。

インプラントそこでこの様に説明しました。

「2回しかあっていない人間に、いきなり、このような高額の治療費を提示されて悩まないわけがありません。
そこで、とりあえず保険の入れ歯を作ってみたらいかがでしょうか。
同じ保険治療でも今までの保険の入れ歯と入れた感触が違うはずです。

自費診療はルール無用であるため、道具が技術を補う場合があります。それに対し、保険は全国一律のルールで行われる、制限のある治療です。同じルールならば、治療結果の評価が下しやすいと思います。

相撲を想像してください。
ルールがあるから、横綱は十両より強いことがわかります。
ルール無用だと、武器の良し悪しで強さが変わるため、評価ができません。

保険で治療して、今までよりも良い結果が得られたならば、私を信頼して、高額治療に移行すればよろしいのではないでしょうか。」

この提案に非常に納得され、インプラントの前に、ひとまず保険の入れ歯治療をすることとなりました。

入れ歯が入った所

インプラント上の奥歯を短くし、道路で言う所の舗装工事を行い、保険の義歯が入りました。
3ヶ月で総額約3万円です。

調整2回で痛いところは無くなり、奥歯でかなりのものをかめるようになりました。
以前は何回調整しても、ガタついて痛みが取れなかったとのことです。
入れ歯が素晴しい訳ではありません。
入れ歯が機能しやすい環境になったのです。
入れ歯がガタつかないならば、インプラントにもガタつくような力はかかりません。

根元の虫歯はこれから治療していきます

インプラント「では、来週からインプラントの治療にとりかかりましょうか。」
と申した所、
「いえ、これで十分です。有り難うございました。」
ということで奥歯は終わってしまいました。
あとは歯の根もとにある小さな虫歯を治療するだけです。

保険診療は治療内容に制限のある診療です。
そのため、いつでも満足できるとは思いません。
しかし、この症例で、設計が大切であることがお分かりいただけると思います。

以前除去した歯石が、再びつき始めています

インプラントとび出ていた上の奥歯が短くなったのが分かるでしょうか    

歯科医師から一言

個人病院の院長は医師であるとともに、従業員数名程度の小さな会社の個人事業主です。
経営のことを考えると、このようなケースはつらいこともあります。
私が悪い人なら、さっさとインプラントを始めて治療費を請求したと思います。

経営上は悲しいことですが、廉価で満足して下さり、信用・信頼して下さり、奥様を紹介してくださったことに対し、医師としての誇りと喜びを感じます。

「ありがとう」の言葉と笑顔は、何にも勝る診療報酬と思います。