「小さな虫歯を歯医者に大きく削られた!」と主張する患者さんの大部分はこのような症例です

投稿日:2022年6月5日

カテゴリ:10.歯を抜かない症例 12.虫歯の症例

虫歯治療の症例①

20代女性虫歯の治療です。 保険診療です。

黒い溝の部分が虫歯です。一般の方には小さな虫歯と思えるかもしれません。

少し歯の固い部分を削って広げると、中の方はグズグズの状態の虫歯が広がっています。

虫歯は入り口が狭く、中で一気に広がることが多いです。何故なら歯は表面が硬くて内部が柔らかいからです。

「小さな虫歯を歯医者に大きく削られた!」と主張する患者さんの大部分はこのような症例です。

また、大きい虫歯だからと言って必ずしも凍みや痛みがあるわけではありません。

何故なら虫歯が大きくなるとその分神経が奥の方へ逃げ、一定の距離を保とうとすることにより凍みないのです。

「歯が凍みる」との主訴で来院された方の大多数は知覚過敏、くさび状欠損です。

知覚過敏・くさび状欠損はあごの力、歯の使い過ぎによって引き起こされます。

今ここで虫歯に侵された柔らかい部分(軟化象牙質)を完全に除去すると、神経(歯髄)に達してしまいます。神経をとるという事は歯の形を残して声明を無くすという状態にするという事です。
ミイラは剥製は形はありますが命はありません。経年劣化で崩れてくることが想像できますでしょうか。

可能ならば神経を取りたくないため、軟化象牙質を多少残し、その部分を硬くしていく薬剤を塗布することにしました。

唾液が入るのを防ぐために ラバーダムシート というものを着けています。

軟化象牙質の上に薬を置きました。

硬い材料で封鎖しました。これで約1か月様子を見ます。

もし、凍みや痛みが無ければ、正式な硬い材料に置き換えます。

どんな症例でも神経を取らないわけではありません。

何もしなくてもズキズキ痛む(自発痛がある)場合は、病気が神経にまで達しているので、神経を取らざるを得ません。

これらはすべて保険診療です。

 虫歯治療の症例②

20歳女性、検診にいらっしゃいました。

健診で虫歯を見つけました。

少し黒い所がありますが穴は開いていません。しかしこれは大きな虫歯です。

黒い部分がすべて虫歯です。表面の固い部分を残して内部で虫歯が発達しているのです。

学校歯科健診などでは光の弱い中、患者さんを立たせたままのぞき込むようにして診断するので、残念ながらこのような虫歯が見えない時もあります。

しかし、だからと言って健診が無駄であるとは言えません。地域の病気の傾向を調べるうえで非常に役立つと考えております。

少し削ると中がグズグズになっておりました。

かなり虫歯に侵された部分(軟化象牙質)を取ったところです。これでも取り切れていない可能性はあります。

そもそも齲蝕検知液を使って虫歯を取りきれたと思っても、虫歯菌は奥深くまでしみ込んでいます。

虫歯と健康な部分とは水と油の様に境界明瞭に分かれているわけではありません。

乾いた砂地に水がしみこむように虫歯は進行します。

よって虫歯を完全に取りきるという事は顕微鏡レベルでも無理であり、取り切ろうとするとすべての症例で神経を露出させてしまう事になります。

この様に大きな虫歯ですが、意外と凍みや痛みはありません。

なぜなら、虫歯が進行すると歯の神経がその虫歯から逃げるようにして一定の距離を保とうとするからです。

痛みが無いからと言って病気が無いわけではありません。

歯医者で1年に1回はレントゲンを撮って状況を確認することをお勧めします。